桜花一番街で、フォウトに無理を言って作ってもらったあのマフラー!
期待していたよりもずっと綺麗で、赤が映えるけどゼンゼンきつくなくって、
手触りもサイコーで、なめらかで、力強くて、やさしくて。
茉莉にやるのがもったいないぐらい、俺の分も作ってもらえばよかったなあ、とちょっと後悔。
本当に嬉しい、沢山有難うを言ってもいい足りない!
彼女の今使っているストールは、どれぐらいの付き合いなのか、俺はしらない。
たまに新しくなってたような気もするし、遠い昔に買ったような気もするし、一緒に選んだような、誰かにもらったような気もする。
俺たちは(もしくは彼女は)、ちょっとそのへんの人よりか丈夫に出来ているおかげで、人以外のものに対しても、別れに触れる機会が多い。
石や町や、使い込んだ布や鍋やなんやらの形がかわったり、壊れたりというやつだ。
そのおかげで、俺たちはだいぶん、ちょっとそのへんの人よりかは物を大事にすることが得意になった。
勿論、長い付き合いをするわけだから、物選びも慎重になる。
別れる機会は少ないほうがいいんだから、飽きて捨てたりとか、好きじゃないから粗末に扱って壊したりとか、まだ使えるのに新しいものをつい買ってしまうとか… そんなようなことはしたくない。
その点では心配はいらないみたいだ。
俺もそうだけれど、茉莉はあのマフラーをとっても気に入ったみたい。
首にまいて、自分のしっぽにじゃれるみたいに、その動きや色、カタチや音で遊んでいる。
それに、彼女のストールは、別に嫌いになったり壊れたわけじゃあないけれど、やっぱりそろそろストールを引退したかっただろうと思うんだ。
あのストールは、ストール以外のものに生まれ変わる。
たとえばコースターとか、ランチョンマットとか、布巾とか、鍋しきとかさ。
そのへんも彼女と相談しなくちゃ。
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