今日は綾瀬という女性を助けた。鹿に襲われていた。
その綾瀬という女性が、「宝玉を集めると島が崩壊する」と教えてくれた。
この不思議がいっぱいで、自然がたくさんで、ヘンな動物がいて、面白い食材があって、楽しくて気のいい奴らがいっぱいいるこの島がもし、本当に崩壊するとしたら―
でも、そういう素敵なものとひきかえに、マツリの願いが叶うのなら、おれはそれを厭わない。
その願いはごくごくありふれたもので、普通の人であれば、願えば叶うし、願わなくとも叶えることができるものだ。
「ひと」ならば当たり前の願い事なんだ。
何もおかしいことじゃない。
おれはマツリをああいう顔にしてしまったことを後悔こそしたが、今では少し誇りに思っている。
彼女を「ひと」にすることができたのだと、「ひと」に近いものにすることができたんだと、おれはマツリに少し恩返しができた気になっている。
けれども、「少し」でしかない。
おれはやっぱり、夫として、欲が少なく、少しのことで微笑んでくれ、大いに怒り、やさしく叱り、力強く愛してくれる彼女へ「それ」を叶えてやりたいと思う。
そのために俺は何度もがんばったし、いろいろ試してみたけれど、結果彼女に俺を気遣わせるだけになってしまったりした。
だから、おれはやっぱり宝玉を集める。探すよ。
もう、神様に頼るしかないんだ。
俺のマヤウェル。
マヤウェルはあの酒を神々に教え、その礼を受けて神様にしてもらえる。マヤウェルという妻がいたから、夫で人間のパテカトルは一緒に神になることができた。
だから、今度は俺が、君に。
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