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君に、酔う
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間に合わなかった。

気付くのが遅すぎて、うわさを聞いて覗いたときにはもう8日だった。
汚い字でスケッチブックの切れ端に書いたアシンメトリーな白い短冊には、「ずっとマツリといれますように」。

でもよく考えたら、一年に一回しか会えないカップルが、年中一緒にいる俺たちの願いを叶えてくれるようには思えなかったので(むしろこの幸せぶりにねたまれて恨みを買ったらタイヘンなので)、まぁいいか、と思った。

勿論竜胆が叶えてくれるとはつゆ知らず、その短冊を彼はくしゃくしゃっとつぶして、今晩のスープの火種にした。

走った。
沢山走った。

マツリは身の動きやダンスのステップなんかは素早いけれど、走るのはなんかトロイ。
だから多分、膝が悪い俺にすら追いつけない。
絡みつくような砂を蹴飛ばして、俺は逃げた。

俺は、7日間を繰り返している。
ずっとだ。
マツリにあれを分けてもらったときから。
俺は7日すすめば7日前に戻る。
大怪我をしても7日前に戻る。
昔の怪我は7日目には少し良くなっているけれど、
8日目には7日前に戻ることになるので、昨日よりは悪くなっている。
記憶はそのまま持ち越せるが、体がそうなのだ。

それなのに、昨日は。
7日間が繰り返さず、8日目が来たのだった。
体の調子でわかった。

今まで、何年も、何十年も、もしかしたら何百年もそうだった。
そうだったのに。

…そうだった分、反動が来るだろうと思った。


ああ、こんなことを言うときっとマツリは怒るだろう。

「老いた俺は見せたくない」なんて。

でも、俺がここで、老いて、枯れて、朽ちれば、彼女の右顔の老いは止まるだろうか?
もしかしたら元に戻るだろうか?あの、つるりとした彫刻のような、綺麗な肌が。
そしたら仮面なんてしなくて良くて、いつでも口付けできるなあ。

「……ははっ」

笑った。
誰が口付けするんだよ。
俺はもう――消えるってのにさ。
俺は走った。

蹴躓いた。

息が切れてー

転んで、鼻血を出した。

鼻血がいつも出るのはガキのころから。

死ぬならマツリの居ない所がいいと思った。

きっと悲しんでくれないから――

夢を見た。


瞳を開けたとき、いよいよ自分にかかった魔法が解けるのだな、とぼんやり思った。
不思議と悲しくなかった。
傍らでは、面を外したあの人がすやすやと寝ている。
この熱さだというのに、ぴったりと俺の腕にくっついて、指先をからめるように手を握っている。

枕元の魔女の顔が、あざ笑うように俺を見ていた。


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書き手

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HN:
ホマレ=ロホ
性別:
男性
職業:
プー
趣味:
料理、筋トレ、いちゃいちゃ
自己紹介:
Eno.745(前期1378)
外見40代の男性
肩口までの紅い髪を後ろで縛り、グリーンのハンチングを被っている
筋肉質で、近距離パワー型
意外と手先は器用であり、料理が得意
プロレス技を好んで使い、戦いを楽しむタイプ
マツリ(495)という嫁がいる
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