夜明け。
傍の妻はとても冷たい。
死体を抱いて寝ているかのようだ。
最初は毎朝のように慌てて肩を揺すっては起こし、慣れるまでそれをしばしば繰り返したものだ。
起こされた妻は嫌な顔一つせず、むにゃむにゃ言いながらオハヨウ、と呟いてくれたりした。
自分の温かさからか、それとも愛しさからか―― 彼は少々自惚れつつ、ぴったりと自分に寄り添っている妻の背中を撫でてやる。
自分の体温がその骨ばった背に奪われ、消えていった。
つるり、と妻の腕を撫でる。
冷たく、人としてはいくらか固い。
女性としては色がなく、男性としては頼りない。
それでも確かに自分の愛する妻だった。
もう、君をこれ以上凍えさせてなるものか。
一人思いつめてぎゅう、と妻の肩ごと抱きしめると、うぅ、と呻き声がし、僅かに熱を帯び始めた左手がロホの背中をパンパンと叩く。
かすかに、ぎぶ、と聞こえた。