実は、花を摘むのは好きじゃない。
今夜は灯明祭がある。
そのために花を用意しなくてはならないのだけれど、
持ち寄る花もまだ決まってない有り様だ。
ああ、いや、別にお祭りに水を差したいわけでもなくて、
他の人が花を摘んでても別に気にならないし、
ようは俺の心の持ちようというか……
いや、神様への捧げ物としてなら、何度か摘んだことは当然ある。
花屋で束を大事に選んで買ったこともあるさ。
灯明祭は神様を迎えるお祭りだから、その辺は気にしちゃいないんだけれども…ううん、難しいなあ、なんと言えばいいんだろう?
俺は野に咲いている花を、ぷつりと摘むことができないんだ。
いつも考える。
もしも花屋の店先に飾ってある花束なんかをプレゼントするとして、その花束はどうなっちゃうんだろう?
花瓶に挿されて、それで枯れたら捨てられちゃうんだろう。
捨てられるのに買ってあげるのなんて、なんだかおかしいと思うんだ。
だから、鉢植えをプレゼントしたことはある。
勿論、根から切り離されなくても花は枯れるのは知ってるけど…だけど。
すごく綺麗な花があったら、俺は好きな人へそれを持ち帰るんじゃなくて、その花が咲いている場所へ好きな人を連れて行きたい。
そして、来年もまた見に来ようねぇって言いたいんだ。
それでも、一本ぐらいは。
俺の故郷には沢山の神様がいたけど、本当は――
チトニア(メキシコひまわり)
「果報者」「優美」「幸福」「あなたは美しい」
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