走った。
沢山走った。
マツリは身の動きやダンスのステップなんかは素早いけれど、走るのはなんかトロイ。
だから多分、膝が悪い俺にすら追いつけない。
絡みつくような砂を蹴飛ばして、俺は逃げた。
俺は、7日間を繰り返している。
ずっとだ。
マツリにあれを分けてもらったときから。
俺は7日すすめば7日前に戻る。
大怪我をしても7日前に戻る。
昔の怪我は7日目には少し良くなっているけれど、
8日目には7日前に戻ることになるので、昨日よりは悪くなっている。
記憶はそのまま持ち越せるが、体がそうなのだ。
それなのに、昨日は。
7日間が繰り返さず、8日目が来たのだった。
体の調子でわかった。
今まで、何年も、何十年も、もしかしたら何百年もそうだった。
そうだったのに。
…そうだった分、反動が来るだろうと思った。
ああ、こんなことを言うときっとマツリは怒るだろう。
「老いた俺は見せたくない」なんて。
でも、俺がここで、老いて、枯れて、朽ちれば、彼女の右顔の老いは止まるだろうか?
もしかしたら元に戻るだろうか?あの、つるりとした彫刻のような、綺麗な肌が。
そしたら仮面なんてしなくて良くて、いつでも口付けできるなあ。
「……ははっ」
笑った。
誰が口付けするんだよ。
俺はもう――消えるってのにさ。